気管支喘息とは

発作的に呼吸困難と喘鳴(ぜんめい)がおこり、自然に、または治療によって治まることを特徴とする疾患です。特定の心臓や肺の疾患によらないものと定義されています。発作は感冒などの感染症による鼻水、くしゃみ、などの症状に続いて呼吸困難となることが多く、ヒューヒュー、ゼーゼーと喘鳴を伴うようになります。この症状が一定時間続き、たんが出るようになりますが、粘度の高いたんではなかなか切れにくく、吐き出すのが困難で苦しくなります。いったん発作がなくなるとまったく症状が見られず、健康人と見分けがつかなくなります。発作は、一般的に秋(9月〜10月)に最も多く、次に春から梅雨にかけて(5月〜6月)多いです。高年齢者では、冬に多く、季節に関係なく一年中起こることもあります。一日の中では、真夜中から明け方にかけて多く発症します。

気管支喘息の病態  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外界からの刺激(ほこり、ダニ、花粉、ガス、温度変化、ストレス、など)により気管支にCアレルギー反応が起こり、気管支に@炎症として現れます。その炎症によりA気管支狭窄(きかんしきょうさく:急に縮んで空気の通り道が狭くなる)が起こります。その上、その炎症のためBたんが詰まり、たんを出すために咳をして、咳のため気管支の炎症が悪化してという悪循環が生じます。

 

治療方針

気管支喘息の薬には作用が局所的な吸入薬と全身的な内服薬、注射薬があります。

@    気管支の炎症を抑えるステロイド剤

内服薬、注射薬は作用が全身的でありその効果も高く、その分副作用の発現する可能性が高くなります。起こっている発作の炎症を抑えるために使用します。

吸入薬の場合、その作用は局所的であるため、全身的副作用も少なく喘息のコントロールに推奨されています。気管支拡張剤や全身性ステロイド剤のように、すでに起きている発作をすみやかに軽減する薬ではないので、予防的に使用してあらかじめ発作が起きないようにします。症状のないときでも、毎日規則正しく使用することが大切です。また、内服薬を服用していた場合のステロイド剤の離脱(徐々にステロイド薬を減量して中止する)に使用したりします。

一般的に小児の場合、以前は使用されることは少なかったですが、気管支喘息の病態が分かるにつれて、気管支の炎症を抑えることの重要性が見直され、最近では積極的に小児への吸入ステロイド剤が使用されています。

A    気管支を拡張する気管支拡張剤

気管支を広げて呼吸を楽にします。

以前の吸入薬は発作を抑えるために使用するものが中心でしたが、最近では長時間気管支を拡張して喘息発作を予防するものも登場してきました。また、貼付型の長時間気管支拡張テープもあります。

内服薬の場合、定期的に服用して発作が起きないようにします。もちろん、起こっている発作を抑えるためにも使用します。ステロイド薬の使用しずらい小児の場合、この薬でコントロールすることもあります。服用量を間違えて多く服用したり、服用間隔が詰まったりすると心臓がドキドキする、夜なかなか寝付けない、手がしびれるなどの副作用が発現する可能性が高いため、指示された服用方法(服用量、服用間隔)を守って使用することが重要です。

B    たんをやわらかくして出しやすくする去たん剤

気管支喘息の場合、硬くネバネバしたたんが気管支の内側にこびりつき、炎症や狭窄によって狭くなった気管支をさらに狭くし、喘息の病状を悪化させます。去たん剤は気道粘液の分泌を促進したり、あるいは、気道粘液を溶解することによりたんの粘稠度(ネバネバ)を低下させ、たんの喀出を容易にします。この薬は多めの水分で服用すると更に効果的です。

  C    アレルギー反応を抑える抗アレルギー剤

抗アレルギー剤はほこりやダニなどのアレルギー物質によって起こるアレルギー反応に使用します。アレルギー体質の患者さんに有効です。気管支拡張剤、全身ステロイド剤のようにすでに起こっている発作や息苦しい症状を速やかに軽減する薬ではないので予防薬として使用します。

抗アレルギー剤は、ほこりやダニなどのアレルギー物質によって起こるアレルギー反応に使用します。アレルギー体質の患者さんに有効です。作用は遅効性であり、その作用が現れるまでに10日から2週間かかります。気管支拡張剤、全身ステロイド剤のようにすでに起こっている発作や息苦しい症状を速やかに軽減する薬ではないので予防薬として使用します。

近年さまざまな抗アレルギー剤が開発されており、錠剤では、小児の患者さんでも服用しやすいような剤形のチュアブル錠も使用されています。

注 チュアブル錠の服用方法 

 飲み込めない場合は、口の中で溶かすか、噛み砕いて服用してもかまいません。水なしでも服用できます。アスパルテーム(人口甘味料)を使用しているので、虫歯にはなりにくいですが、歯みがきは忘れないようにしましょう。

治療薬

@    ステロイド剤

       内服薬:プレドニン、プレドニゾロン、など

       吸入薬:フルタイド、パルミコート、キュバール、アルデシン、ベコタイドなど

A    気管支拡張剤

       内服薬: 

  ・キサンチン薬:テオドール、スローピッド、ユニフィルなど

   ・β作動薬:ベラチン、メプチン(ミニ)、スピロペント、アトック、ブリカニールなど

       吸入薬:メプチン(キッド)エアー、メプチンクリックヘラー、サルタノール、セレベント(長時間型)など

       貼付薬:ホクナリンテープ、ツロブテロールテープなど 

B    去たん剤:ムコダイン、ムコソルバン、プルスマリン、ビソルボンなど

@    抗アレルギー剤:インタール、ザジテン、ジキリオン、アレジオン、アゼプチン、セルテクト、アレギサール、アイピーディ、オノン、キプレス、シングレアなど 

注意事項

       現在服用されている個々のお薬が協力して作用して喘息の治療していくので自己判断でお薬を中止したり、効かないからといって多く服用したりしないようにしましょう。また、飲み忘れのないようにきちんと継続して服用しましょう。

       食事がとれないことがありましても、いつもの時間には服用するようにし、お薬の服用を忘れてしまった場合、気が付いた時点で服用しましょう。だだし、次の回が近いときには次の回からとして一度に二回分服用するのは絶対にやめましょう。

       お薬は、多めの水分とともに服用しましょう。

       お薬は高温多湿をさけ、室温に保管しましょう。

       現在服用中以外のお薬を服用する場合、必ず飲み合わせを確認して服用しましょう。

       お薬を服用中、嘔気、食欲不振、動悸(心臓がドキドキする)、興奮、不眠、顔面紅潮(顔が赤くなる)等起こった場合には医師または薬剤師に連絡しましょう。

       日ごろから部屋をきれいにするよう心がけましょう。

       風邪をひかないよう注意しましょう。

まとめ

喘息の治療は発作を起こさないことが第一原則です。定期的に薬を服用して発作が起きないように予防しましょう。頻繁に発作を起こすとお薬の種類が増えますが、逆に、発作を起こさない時間を長く作ることでお薬を減らすこともできます。喘息は自分自身での管理が重要です。自己管理のできない小児にとって親の管理が必要不可欠であることは言うまでもありません。

引用文献

小児ぜんそくの正しい知識 西間三馨著 南江堂

病態生理と薬の作用 石橋 丸鷹著 南山堂

薬効別 服薬指導マニュアル 田中良子監修 薬業時報社

小児診療マニュアル 大国真彦 木島昂監修

今日の治療薬 水島裕 宮本昭正著 南江堂

小児気管支喘息治療・管理ガイドライン 古庄巻史 西間三馨 協和企画