おことわり
テオドールについては最近の喘息治療ガイドラインでの使用方法が大きく変化してきています。
以前テオドールは喘息の初期の段階で多くの患者さんに処方されていましたが、喘息と診断された場合、根本的な治療は予防治療であることを優先させることで、その治療の中心は抗アレルギー剤の内服やステロイドの吸入になってきており、その効果も実績をあげています。
喘息の予防として使用されるテオドールはその処方頻度は下がっていくものと思われますが、患者さんの状態によっては、来れからも処方されるお薬です。
使用の際にはこのお薬の特徴をよく理解して服用していただきたいと思います。ご不明な点は、医師または薬剤師にご相談ください。
平成18年7月
気管支拡張剤のテオドールについては、多くのお母さま方から質問をお受けします。セイワ薬局としては、このおくすりをぜひ正しく理解していただきたくこのコーナーを作製いたしました。お子様の治療を応援する意味でも、おくすりを正しく理解し、正しく使用して治療をしてください。
テオドールというおくすりについて
テオドールという名前は日研化学という製薬メーカーが販売している商品名で、一般名(おくすりの本名みたいなもの)はテオフィリンといいます。このテオフィリンはいろいろな製薬会社が商品名を変えて販売しており、テオドール以外にもテオロング、スロービッド、ユニフィル、テルバンス、テオフルマート、テオスローなどといった商品名で各製薬メーカーがテオフィリンを販売しています。購入している、または、宣伝を受けている医療機関によって、使用するテオフィリンがテオドールであったりテオロングであったりします。(製薬メーカーも競争ですから。)どのメーカーのものが良質で効果が高いということはありませんが、錠剤であったり、カプセル剤であったり、粉薬であったり、1日1回の服用で一日中コントロールできるものであったり、その特長は様々です。
テオドールの作用
テオドールの最も重要な作用は、気管支の筋肉をゆるめる(平滑筋の弛緩)ことによるによる気管支拡張作用ですが、この気管支拡張作用はメプチン、ベラチン、ホクナリン、スピロペント等といった気管支拡張剤(β-刺激剤)より弱いといわれています。テオドールはこれらのβ-刺激剤とは異なった作用の仕方により気管支の筋肉をゆるめる(平滑筋を弛緩させる)ことから症状によっては同時に使用することができます。
慢性期のテオドールの使用については、気管支拡張作用、抗炎症作用を目的に使用されることが多いようです。特に夜間の睡眠障害や朝方に起こる発作(morning
dip)に対してテオドール(徐放性テオフィリン系剤)は有効といわれています。
体の中のテオドール
テオドールは消化管からほぼ100%吸収されます。
経口投与(おくすりの内服)では胃粘膜を刺激して、気持ちが悪くなったり(悪心)、吐き気を催すことがあります。テオドールは水にとけやすく、血液中のテオドールは約24時間以内に消失するといわれています。
テオドールは85〜90%が肝臓で代謝され糞便中に、代謝物と未変化体(約10%)は尿中に排泄されます。 おくすりが体の中で半分の量に代謝される(排出)時間(半減期)は成人で6〜8時間、小児では3〜4時間とされていますが、これは個人差が非常に大きいといわれています。
テオドールの有効血中濃度は10〜20μg/ml
で治療域が狭く、これを超えると副作用の発生頻度が高まり、これ以下では効果が少ないことが報告されています。
なお、臨床では 5μg/ml
でも効果があるとの報告もあり、5〜15μg/mlで効果が期待できるとされ、この治療域の範囲では血中濃度と気管支拡張作用は相関関係にあることが確認されています。
テオドールの副作用
中毒症状の前兆としては、吐き気、頭痛、下痢、不眠などがあります。ただ、テオドールの飲みはじめには、投与量や血中濃度に関係なく、悪心、嘔吐、胃部不快感が現れることがありますが、一過性のことが多いようです。
中毒症状としては、20μg/ml(治療領域内)を超えると嘔吐、30μg/ml
を超えると頻脈、上室性不整脈、35〜40μg/ml
以上では心室性不整脈、痙攣、心呼吸停止を起こし、60μg/ml以上で死亡することがあります。
テオドールによる副作用の発現は、血中濃度の上昇に起因する場合が多いことから、用法、用量を守り、ときには血中濃度のモニタリングを適切に行いながら服用することが望ましいといわれています。
テオドールを飲んでいる時の注意事項
重大な副作用としては、まれに(0.1%以下)ショック、痙攣、意識障害、横紋筋融解症が報告されています。
カフェインを含有しているコ−ヒ−、紅茶、コ−ラなどの摂取は、テオドールの副作用を増加するので注意が必要です。
テオドールは利尿作用があるので、尿量は増えてきます。
錠剤は苦いので噛まないでください。また、テオドールの錠剤は特殊コ−ティングがしてありますので、噛むことによって、その特性が失われます。噛み砕いたり、つぶして服用するとテオドールの吸収が速くなり、中毒症状を起こすことがあるので注意が必要です。
アスピリン喘息の患者さんでは、アスピリンの他に、ピリン系、酸性非ステロイド消炎鎮痛剤によっても喘息発作を誘発することがあります。成人の喘息の患者さんには、アスピリン喘息の方が10%ほどの割合でいらっしゃるといわれており、市販薬等はできるだけ避けるようにしてください。
乳児期(特に1歳未満のお子さん)にはテオドールの代謝能力(クリアランス)に個人差が大きいといわれています。特に6カ月未満の乳児はテオドールの代謝能力(クリアランス)が低く、通常量でもテオドールの血中濃度が上昇することがあります。
テオドールドライシロップ(こなぐすり)を水に溶かした後、長時間放置しますと徐放性が損なわれるので、水に溶かした後は速やかに服用してください。
タバコの煙は、テオドールの血中濃度を低下させます。20本/日以上の喫煙は、血中濃度が半分以下に低下させるので避けてください。また、反面、禁煙すると血中濃度が上昇し、テオドールの中毒症状が発現することもあります。
大量の飲酒はテオドールの代謝(クリアランス)を低下させるので、避けてください。
炭焼きステ−キなどの煙(多環芳香式炭化水素)などは、テオドールの代謝酵素を誘導することにより、その代謝(クリアランス)を増加させるので、血中テオドール濃度は低下します。炭火で焼いた食物の連日摂取は避けてください。
飲み忘れに気付いた場合は、できるだけ早く服用し、以後通常どおり服用してください。ただし、次回服用時間まで4時間以内のときは、忘れた分を抜き、以後、通常のように服用してください。
動物実験では催奇形性が報告されています。胎盤を通過し胎児に移行し、新生児に嘔吐、神経過敏などの症状が現れることがあります。
テオドールの相互作用
テオドールを代謝する酵素を阻害する医薬品と併用することによってテオドールの血中濃度が上昇し、中毒症状が現れやすくなるといわれています。
テオドールの血中濃度を上昇させる医薬品は次のとおりです。
シメチジン、塩酸メキシレチン、塩酸アミオダロン、ニュ−キノロン剤、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、ロキシスロマイシン、チアベンダゾ−ル、塩酸チクロピジン、塩酸ベラパミル、塩酸ジルチアゼム、アシクロビル、インタ−フェロン、イプリフラボン、シクロスポリン、アロプリノ−ル
エリスロマイシンもテオドールの血中濃度を上昇させますが、個体差が大きく、全く影響を受けない人も多いようです。相互作用の発現には数日を要します。
テオドールを代謝する酵素を増やしてしまう医薬品と併用することによってテオドールの血中濃度が下降し、効果が減弱し、喘息発作を招くことがあるといわれています。
テオドールの血中濃度を下降させる医薬品は次のとおりです。
フェニトイン、カルバマゼピン、フェノバルビタ−ル、リファンピシン、ランソプラゾ−ル、リトナビル